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例会山行 北アルプス 常念岳(2857m)・大天井岳(2922m)                                                     (長野県)

2018年5月14日~18日  報告:木下 写真:竹原・木下

 遠征登山は通常、夏や秋に行われてきたが、今回は残雪期の春山の山行が会長より初めて企画され、男性4名・女性5名の計9名の参加者が北アルプスの常念岳を目指した。当初の計画では、燕岳(つばくろだけ)から大天井岳(おてんしょうだけ)を経由し、常念岳へと向かう予定であったが、燕岳周辺の雪の状況を考慮して、登山一日目(15日)は一の沢登山口から常念岳へ登り、常念小屋に宿泊。二日目は大天井岳を往復し、常念小屋に連泊。三日目に一の沢へ下山する行程に変更となった。一日目と二日目は晴天で、素晴らしい展望を見ながらの登山となり、三日目は雨の中の下山であったが、雪渓を無事に乗り切り、皆笑顔でゴールすることができた。

(写真左:ライチョウがひょっこり)

5月14日(月) <移動日>

新八代駅(07:51発) ― 新神戸(11:11着、11:29発) ― 名古屋(12:34着、13:00発)  ―  松本(15:03着、 15:08発)  ― 穂高(15:40着)  ―  ホテル(16:00着)

 

 新八代駅に7名集合し、新幹線さくら542号に乗り込むと、新水俣駅から乗車してきたSさんと車内で合流。熊本駅からTさんとも合流して、参加者9名は穂高へ向かう。新神戸で乗り換え、名古屋で特急しなのに乗車。車内で駅弁を頬張り、一息つく。松本からは在来線に乗って、穂高へ。車窓からはのどかな田園風景が広がり、雪をかぶった山々が雲間から見え隠れしていた。穂高からはジャンボタクシーで、宿泊施設ほりでーゆ~四季の郷に16時に到着した。夕食は明日からの登山の無事を祈願して、ビールや地酒「大雪渓」で乾杯し、盛り上がった。その後、温泉に入り、明日の準備を整え、早めに就寝した。

(写真左:車窓からの田園風景)

5月15日(火) <登山一日目> 常念岳登山

 

起床(5:00) ― 朝食(6:30) ― ホテル出発(7:15) ― 一の沢登山口出発(7:50) ―

笠原沢(10:20) ― 雪渓途中で昼食(12:00) ― 常念乗越(13:30) ― 常念岳登山開始(14:00) ― 常念岳山頂(15:30) ―常念小屋(16:30)

 

 5時に起床し、温泉に入りさっぱりしてから朝食会場へ。地元安曇野の野菜の惣菜や漬物が特に美味しく、バイキングということもありついつい食べ過ぎてしまった。7時15分にホテルのマイクロバスで登山口へ向かう。途中、野生のサルを何度も見かけ、車内のテンションが上がる。

  バスはどんどん高度を上げ、7時40分に標高1320mの一の沢登山口へ到着。バスを降りるなり、「熊出没注意」と書いてある立て看板を見つけ、どうか道中出くわしません様にと切に願った。ここにはまだ開いてはいないが登山相談所があり、登山届をポストに提出してから、7時50分に出発した。

(写真左:旅がいよいよ始まる)

 

 登山口からは沢に沿って緩やかな登りが続き、途中で丸木橋を渡ったり渡渉したりしながら進んで行く。芽吹いたばかりの美しい自然林の道は、これからたくさんの緑に包まれることだろう。沢の流れる音や、鳥の鳴き声をBGMに快適な山歩きになる。固い靴底の冬靴にようやく慣れてきた頃、雪をかぶった常念岳と思われる山が遠くに見えてきた。笠原沢を過ぎた辺りから、登山道が雪道に変わり始める。雪目を防ぐためサングラスをかけ、深くなってきた雪に少々手こずりながら進んでいく。

(写真左:沢沿いの道を歩く)

 

 大きな雪渓に入った時、ここでアイゼンとピッケルを取り出して装着。スケールの大きな雪渓にわくわくしながら登って行く。今年は昨年に比べて雪が少ないらしいのだが、初夏の5月にこんな雪の中にいられることに驚く。

(写真左:大きくて長い雪渓)

 

 胸突八丁の手前で軽く昼食を摂り、休憩をする。ここから傾斜がきつくなり、一歩一歩ゆっくり登って行く。風雪の影響からか、木の枝が斜めに伸びていた。後ろを振り返ってみると結構な急坂で、ここを帰りに下ることを考えると怖くなった。雪渓を登り詰め、右にトラバースするとやがて常念小屋のある常念乗越だ。アイゼンを外し、登って行くとすばらしい景色が待っていた。雪に覆われた槍ヶ岳、穂高連峰が目に飛び込んでくる。皆、この壮大な光景に感嘆の声を上げている。北アルプスに来たのだという実感がここにきてより一層湧いてきた。

(写真左:急斜面を一歩一歩)

 

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(トラバース越しの常念岳)
(そこには絶景が待っていた)

 常念小屋で手続きを済ませ、荷を軽くしてから常念岳へと向かった。岩がゴロゴロして歩きにくかったが、右を向けば常に穂高や槍ヶ岳の峰々を望むことができる道のりに、気持が高まる。山頂に到着すると、そこは360°の大展望だった。常念乗越にいた時には見えなかった、燕岳や白馬岳方面の峰々も遠くに見えている。雄大な景色に言葉もなく、ただずっとここにいたい、眺めていたいと思った。山での時間を堪能し、名残惜しいが山頂を後にし、16時40分小屋に到着した。

(写真左:大展望の山頂:ドローン空撮)

 

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(ため息の出る景色)
(美しい稜線)

 18時に食堂に集まると、5~6名の宿泊客が食事をしていた。この時期、山小屋は空いているようだ。まずはビールで乾杯してから夕食は始まる。今日のメインはハンバーグ。Mさんから食べきれないからと半分頂く。食堂のカーテンを開けると、槍ヶ岳を中心に山々を見ることができ、毎日ここでごはんを食べることができたらどんなにいいだろうと想像した。夕食後、明日の準備をして、21時前には就寝した。

(写真左:小屋ごはん:夕食編)

 

5月16日(水) <登山二日目>  大天井岳往復

 

起床(5:00) ― 朝食(6:00) ― 常念小屋出発(7:00) ― 大天井小屋(11:00) ―

大天井岳頂上(11:15、昼食後12:00出発) ― 常念小屋(15:00)

 

 4時すぎに起き、ダウンジャケットとカメラを手に小屋を出る。外は思ったほど寒くはない。常念乗越まで歩き、安曇野の町を見下ろすと徐々に明るくなってきている。空が霞んでいて、日の出ははっきりと見ることができず、槍ヶ岳の山々に朝日が当たるモルゲンロートを拝むことはできなかったが、今日もよい登山日和になりそうで気持ちが高まる。6時に朝食を摂り、準備を整え、7時に小屋を出発した。

(左下の星空の写真は夜中に、Tさんにより撮影されたものです。私は起きられなくて実際には見ていませんが、満天の星で流れ星も見られたようです。)

(写真左:小屋ごはん:朝食編)

 

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(初めて見たカメの木)
(常念岳と星空)
(朝日に照らされた峰々)

  今日の計画は、大天井岳の往復だ。快晴で、暑くなりそうだったので、昨日よりも薄手のアンダーウェアに長袖のシャツで、歩き出す。所々、雪の残った道も登りながら、高度を上げていくと、眼下に常念小屋が小さく見えている。昨日と同様に、穂高連峰や槍ヶ岳の山なみがはっきりと望むことができる。横通岳を右に見ながら、ゴツゴツした岩場を抜けると、先の方まで見渡せる縦走路に出た。少し開けた所で休憩を取っていると、先の方にすり鉢状をした雪の斜面が見え、ここに入り込んでしまったらアリ地獄のように抜け出せなさそうだと怖くなった。

(写真左:常念岳を背に登る)

 

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(縦走路を空撮)
(恐怖!雪のアリ地獄)

  東天井岳の直下でアイゼンとピッケルを装備し、雪渓をトラバースする。滑落しないように、慎重にゆっくりと歩き出す。きつい傾斜を直登し稜線に出ると、ほっとして気持ちが緩む。そのまま雪道を登り上がると、東天井岳だ。雪渓を直登せずに横にトラバースしていくルートを歩いたメンバーと縦走路で合流し、大天井岳を目指す。

(写真左:東大天井への道のり)

 

  アップダウンを繰り返しながら行くと、山小屋「大天荘」が見えてきた。ここはまだオープンしておらず、屋外のトイレの屋根まで雪で覆われている。ここから雪道を15分ほど歩くと、大天井岳山頂(2922m)だ。見渡す限り、たくさんの山に囲まれている。北に伸びる縦走路を辿ると赤い屋根の燕山荘と燕岳が見える。また南西に伸びる稜線を目で追うと、槍ヶ岳、南岳、北穂高岳、奥穂高岳、前穂高岳とずっと続いている。私たちのパーティー以外誰もおらず、貸し切り状態の山頂で景色を楽しんだ。行動食とおにぎりの豪華とは呼べない昼食だったけれど、ここからの絶景で十分にお腹が満たされた。

(写真左:屋根まで達する雪の量!)

 

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(最高のランチタイム:空撮)
(燕岳方面を空撮)

  下山する前に、山頂に倒れていた指標を立て直し、コンクリート製の重たい指標が再び倒れないように、皆で回りに石を積み上げた。会長がコンパスを使い、方角もばっちり合わせた。今度、いつここに来られるか分からないが、この指標がずっと倒れずにいてくれたらいいなと思いながら、山頂を後にした。

(写真左:指標を石で固定する)

 

  東大天井岳の直下で、再びアイゼンとピッケルを装備し、雪渓をトラバースした。5mほどの急斜面を下る時、二人が滑ってしまった。下が段になっていたのでここで止まることができよかったが、もし段もなく、滑落停止もできなかったなら、そのまま斜面を滑落することになっていたかもしれない。自然の中では、山の中では、危険と隣り合わせでもあるということを心に置いて向き合わねばならないと感じた。

(写真左:急斜面を下る)

 

  下山とはいっても、下るだけでなく、何度も登り返しながら、元来た道を歩いて行く。まだまだゴールの常念小屋は見えないが、美しい山の稜線を眺めながら、ゆっくりと進む。明日は天気が悪いようなので、この景色は今日で見おさめかもしれない。その景色を目に焼き付けるかのように立ち止まっては進み、立ち止まっては進みを繰り返した。やがて小屋の前に着くと、先に到着していたMさんからビールとおつまみの差し入れがあり、皆で乾杯した。とにかく美味しかった。

(写真左:見晴らしのよい道)

 

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(快適な天空散歩)
(時々、立ち止まって眺めを楽しむ)

  部屋で休憩してから、夕食のため食堂に行くと、男性が一人席に着いていた。今日はこの東京から来たという男性一名と私たちパーティーの10名だけのようだ。一緒になったのも何かの縁というここで、皆でワインで乾杯し、無事に登山できたことを喜びあった。今日のメインは、鶏肉。味が浸み込んでいて美味しい。またしてもMさんから食べ切らないからと一つ頂き、完食。テラスに出てみると、山々の頂にはガスがかかってきていて、明日の天候が心配された。

 夕食後は、男性陣の部屋に自然と皆集まり、座談会が始まった。消灯まで、山以外の話でも盛り上がった。明日のために早めに床に就いたが、夜中、強風の音に何度か目が覚めた。無事にあの急斜面の雪渓を下山できるだろうかと不安になる。

(写真左:小屋ごはん。今日はワインで乾杯!)

 

5月17日(木) <登山三日目> 下山

 

起床(5:00) ― 朝食(6:00) ― 常念小屋出発(7:00) ― 急斜面の下(出合)(7:50) ― 一の沢登山口(10:45) ― マイクロバス迎え(11:30) ―ホテル(ほりで~ゆ四季の郷)到着(11:50)

 

  朝起きると、夜中の強風は収まっているようだが、小雨が降っている。雨に備えて準備を整え、朝食を摂りに食堂へ向かう。ここでの最後の食事だ。味噌汁をお替りし、美味しくいただく。テルモスにコーヒーを入れ、無事に雪渓を乗り切ったら、飲もうとザックにしまった。雨具とアイゼンを装着し、雨の中小屋を出発した。

 

  しばらく行くと雪渓が始まる。急斜面のため、Sさんが足場を作りながら先頭を行かれ、その後にメンバーが続く。雪面を思い切り踏み込み、アイゼンを足に引っ掛けないように十分気をつけながら、急斜面を下って行く。途中で凍っていてピッケルが刺さらない場所もあり、気が抜けない。ここで滑落したら一気に下まで落ちると思うと怖かった。

 緊張感からか足を強く踏み込みすぎて、大腿四頭筋が悲鳴を上げそうになっている。『雪渓下るまで何とかもってくれー』と祈りつつ、まだかまだかと急ぐ気持ちを抑えながら、慎重にゆっくり下って行く。50分ほどかけて下り切った時、緊張が解けて、皆で安堵した。ここで休憩を交え、滑落停止の訓練を行った。訓練ではできても、いざ本当に滑落した時に自分で停止することができるだろうかと思い、課題が残った。

(写真左:急斜面を下り終え、ほっと一息)

 

  ここから30分ほど緩やかな雪面を歩き、アイゼンを外すと、雪は次第になくなっていく。雨のためか、沢の水量は増しているようで、ゴーゴーと音を立てながら流れている。登りの時は気付かなかったが、登山道の脇にはたくさんの小さい花々が咲いている。サクラも咲いていて、ここは今が春真っ盛りなのだと思われた。立ち止まっては写真を撮り、一番最後からのんびり雨のなかを歩き、無事にゴールに到着。

 その後マイクロバスでホテルに向かい、それぞれ温泉に入ったり、お土産を買ったり、洗濯したり思い思いに過ごした。夕食では、地元のワインで乾杯し、無事に下山できたことに感謝した。

(写真左:慎重に橋を渡る)

 

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(増水した沢沿いの道を行く)
(清楚な花、エンレイソウ)

5月18日(金) <松本観光・移動日>

 

起床(5:30) ― 朝食(6:30) ― ホテル発(8:20) ― 豊科駅 ― 松本市内観光(9:30~11:30) ― 松本駅発(しなの10号・11:53) ―名古屋(14:01着、ひかり471・14:09発) ― 新神戸(15:14着、さくら561・15:22発) ― 新八代(18:37着)

 

 今日は晴れている。そして気温は32℃。松本市内で2時間ほど観光できるようで楽しみだ。Sさんと私は松本城が初めてのため、先にお城へ向かう。他のメンバーは大王わさび園へとわさびを求めに。その後、偶然松本城で合流し、集合写真を撮った。お城の背景には、北アルプスが見えている。素晴らしいロケーションだ。

 散策した後、松本駅で駅弁を購入し、しなの10号へ乗り込み、名古屋、新神戸でスムーズに乗り換えが済み、新八代駅に18時37分に到着。皆笑顔で別れ、北アルプスの旅が終わった。

(写真左:松本城の遠景に北アルプスが!)

 

  今回初めての北アルプス、それも春山ということで、装備やウェア選びなど分からないことも多く、不安もあったけれど、みなさんのアドバイスやご協力により、楽しんで登ることができました。雪渓では、アイゼンやピッケルなどの道具がいかに大切なのかを実感したことや、滑落を防ぐ歩き方も学ぶことができ、貴重な経験となりました。そして何よりも、素晴らしい景色に癒され励まされながら無事に登ることができたことが、よい思い出となりました。この計画を企画され、準備や手続きなど会長には大変お世話になりました。メンバーのみなさんのおかげで無事に登ることができました。ありがとうございました。

 

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